皆さま、こんにちは!当ブログ管理人の悠爺です。
私は51歳のときはじめて転職しましたが、転職した会社はいわゆる外資系企業でした。
もう少し正確に言うと、米国企業の日本子会社です。そこで9年間、すなわち50代の大半を費やしました。(現在はさらに別の会社に転職しています。日系企業です)。
初めての外資系での勤務で、それまで新卒で入社以来、四半世紀以上を勤めた日本の大企業とはいろいろと異なるところがありました。
今回はそうした相違のうち、とくに給与・雇用形態にフォーカスして振り返ってみます。
一点注意を申し上げますと、一口に外資系といっても制度や社風はまちまちです。
本社の所在国によっても大きく変わるでしょう。
ここに記載する内容はあくまで私の限られた経験に基づく一つの例としてお読みください。
決して外資系をひとくくりにして一般化するものではありません。
外資系の給与水準
単刀直入に外資系の給与の話に入る前に、そもそも日本の給与は外国と比べてどうなのでしょうか?
外国の給与 vs. 日本の給与
リクルートワークスがまとめている情報を参照してみます。
ここに図表3 1人あたり雇用者報酬(USドル換算)というグラフがあります。
そのまま貼り付けると著作権に触れる可能性があるので、数字だけ抜粋すると、2021年のデータとして、
国 | 1人当たり雇用者報酬($US換算、1時間当たりの賃金) |
米国 | $42.5 |
ドイツ | $37.7 |
フランス | $33.1 |
英国 | $28.9 |
日本 | $24.6 |
イタリア | $20.6 |
韓国 | $16.7 |
と書かれています。
ここで「1人当たり雇用者報酬」とは、賃金のほかに雇用主が支払う社会保険料なども含み、直接間接を問わず、会社が雇用者に配分した報酬の額として計算したものです。
ご存じのとおり、日本では社員の社会保険料の半額を会社が負担します。会社が負担しなければ、その分を給与に上乗せしてから天引きされるか、あとで個人で納付することになるでしょう。
その場合、見た目の給与は増えますが、可処分所得は変わりません。
こうした社会保障制度は国によって異なるので、個人が受け取る給与ではなく、会社側が人件費として支払う「雇用者報酬」で比較したものが上表の数字になります。
雇用者報酬の方が、個人に支払われる給与の金額よりも、国どうしの比較という目的には適っているように思います。
さらに1時間当たりの賃金として換算することで、長時間労働で年収を押し上げるような偏差を相殺し、純粋に雇用主が人件費として負担する1時間当たりの金額での比較になっています。
この結果を見て、上の記事では以下のように語っています。
これを見ると、日本の賃金水準は諸外国と比べて確かに低い。為替水準には留意が必要だが、直近の数値で見ると、ドイツやフランスは比較的に賃金水準が高い国と言えるだろう。英国はそれより低い28.9ドルである。日本はそれよりもまた一段低く、24.6ドル/時間となっている。そして、これは近年だけの傾向ではなく、長期的な傾向としてもうかがえる。
残念ながら日本の賃金は欧米の先進国と比べて低いことは事実のようです。
特に米国との差は大きいですね。。
$42.5 / $24.6 = 1.72
実に日本の平均賃金よりも72%も高いのです。
上のリンクから図表3のグラフを見て頂ければわかりますが、1990年代、日本がバブル経済だったことは日本の賃金は米国よりもずっと高かったのです。
もはや隔世の感がありますね。
外資系の給与が高いわけ
明確な統計データで確認したわけではありませんが、一般に日系企業とくらべて外資系の方が給与は高いというのが私の肌感覚です。
外資系の給与が高い理由について解説した記事がありましたので、参考でリンクを貼りつけておきます。
この記事に書かれている「理由」は全くその通りだと思いました。
外資系で働く人の多くが中途採用、すなわち転職組で、彼らは果たすべきミッションとそれに応じた報酬としての給与で雇用契約を結びます。
即戦力として日系企業からヘッドハントされた人も多いです。
引き抜く以上は高い給与をオファーする必要がありますから、外資系の給与が高いのは当然とも言えます。
また職務に応じた基本給は本国での水準を参照して各国にて調整されるため、本国が米国であれば、米国の高い給与水準の影響を受けることになります。
この点も外資系の給与が高い背景になっていると考えられます。
外資系の雇用形態
外資系の多くはジョブ型雇用
ジョブ型雇用とは、その企業にとって必要な職務に対し、その職務を実行するために求められるスキル、経験、資格などを持つ人材を採用する雇用方法です。
つまり最初からその職務を遂行できるスペシャリストを雇います。
欧米企業ではジョブ型が一般的で、日本の外資系企業は本国の雇用および人事制度を踏襲するため、必然的にジョブ型雇用が主流になります。
日本の伝統的なメンバーシップ型雇用は、新卒で一括採用し、勤続年数によってメンバーシップとしての価値があがる「年功序列」を基本とした賃金体系になっており、終身雇用と深く結びついています。
このためメンバーシップ型雇用の会社では中途採用の人は少なく、人材の流動性は低くなります。
外資系の場合、日本に上陸してすぐ事業を立ち上げる必要性から、新卒からじっくり育てるメンバーシップ型雇用では時間的に対応できず、必然的にジョブ型雇用になるといった事情もあります。
スペシャリストは外資系に向いている
私は過去のブログで、その企業でしか通用しないゼネラリストではなく、どこでも通用するスペシャリストを目指すべきだと書きました。
もしスペシャリストとしての腕前に自信があるなら、年齢を問わずジョブ型雇用を採用する外資系への転職は大いに検討されるべきと思います。
伝統的な日系企業ではゼネラリスト偏重の傾向が強く、特に中途採用のスペシャリスト人材はメンバーシップ型の日系企業の中では高い評価を受けづらい環境にあります。
そのような方が、評価され、かつ給与も高い外資系を目指すのは理に適っていると言えます。
外資系の年収・給与体系
それでは外資系の年収やどのような給与体系で構成されているのか、私の経験から解説します。
以下は一つの事例であって、すべての外資系がそうなっているわけではありませんのでその点はご注意ください。
基本給とインセンティブ
多くの外資系は年俸制を取っており、基本給として1年間に幾ら支払うという形で提示され、その金額の12分の1が毎月支払われます。
これに加えて、インセンティブがあります。
つまり基本給としての年俸にインセンティブを加算したものが外資系での年収になります。
インセンティブの構成
インセンティブの具体的な構成は、会社によって異なり、また同じ会社の中でも職種によって異なることもあり、その会社の個性が出るところです。
私が勤めていた外資系企業では、大きく
- 短期的なインセンティブ
- 長期的なインセンティブ
にわかれていました。
短期的なインセンティブは、基本給で約束した以上の成果に対して支払われる報酬で、これは日本でいう賞与(ボーナス)とほぼ同じです。
短期的なインセンティブは、年に1回ないし2回に分割して基本給に上乗せして現金で支払われます。
一方、長期的なインセンティブは自社株の支給、すなわち株式報酬という形で支給されます。
短期的なインセンティブと同様に現金支給する企業もあるようなので、この辺は会社によってまちまちかと思います。
私が勤めていた外資系では、自社株の支給方式としてRSU(Restricted Stock Units、譲渡制限付株式ユニット)が採用されていました。比較的多くの外資系で採用されている方法だと思います。
RSU(Restricted Stock Units、譲渡制限付株式ユニット)とは
RSUの具体的な仕組みを正確に記述すると膨大な量になるので、参考リンクを貼り付けます。
曰く、
RSU(譲渡制限付株式ユニット)とは、株式報酬制度の一種で主に勤務条件を達成した後「事後的」に株式を付与する制度です。一定期間の勤務継続など、企業によって設けられた勤務条件を達成した場合にその会社の株式が報酬として付与される仕組みで、簡単に言えば自社株をもらう権利を付与される制度を指します。
何やら難解に思われるかもしれませんね。もう少し具体的に書きますと、
- 入社後数年間はRSUの適用はない。
- その数年間を経過するとRSUが適用され、その人のポジションに応じた自社株を「事後に」もらう権利が付与される。
- 例えば100株を向こう4年間にわたって、指定された期日に25株ずつ毎年与えられる、という権利が付与される。
- 指定の期日が来ると25株が自分のものになる=権利確定する。
- 権利確定した自社株は、会社が指定した証券口座で運用でき、任意のタイミングで売却が可能になる。
というものです。
事後に権利確定するということろがポイントで、権利確定のためには向こう数年間勤務を続けなければなりません。
また、株での支給なので、誰しも株価を少しでも上げたいと考えるようになります。
つまり長期間その会社に勤めて、会社の価値(株価)を高めるように努力するというモチベーションが働く仕組みであり、それゆえ長期的なインセンティブというわけです。
これは同時に会社にとっても、社員に離職されにくくするリテンション対策としての機能も持っていることになります。
RSUは通常年に1回付与されるため、仮に上に記した例のように4年に分割される場合は、その年を含めて4年分のRSUによる権利確定が地層のように積み重なることになります。
RSUで権利確定すると確定申告が必要
RSUに絡んで3つのタイミングを表す用語があります。
- Grant:権利付与
- Vest:権利確定(制限解除)
- Sell:売却
時間的にはGrant、Vest、Sellの順になります。
Grantのタイミングでは収入にはなっていないので申告の必要はありませんが、Vestになると自社株が収入として確定します。
自社株は給与の一部とみなされるため、現金での給与に合算した給与所得として所得税を課税されます。
現金での給与は源泉徴収されますが、ご存じのとおり所得税は累進税率が適用されるため、自社株の収入が合算されることで税率がアップする可能性があります。
このため権利確定したらその年から確定申告は必須になります。
税率がアップすることで多額の納税が必要になることがあり得るので、権利確定した自社株は適切なタイミングで売却し、納税に備えて現金化しておくことも場合によっては必要になるでしょう。
もちろん納税に耐えられるだけの貯蓄があれば、無理に売却する必要はありません。
また、売却時には通常の株の売却と同じで、Vest時と比べて高く売れた場合は、利益を譲渡所得として申告し、課税されます(申告分離課税)。
RSUの証券口座が本国(私の場合は米国)で開設された場合、日本の証券口座の「特定口座」のようなものは通常ないので、譲渡所得も確定申告する必要があります。
配当所得があった場合も同様です。
米国の場合、日本だけでなく米国から二重に課税されないようにForm W-8BEN(米国源泉税に対する受益者の非居住証明書)というフォームを提出する必要があります。
提出しないと二重課税されてしまいます。
RSUを運用している証券会社のシステムを通じて、そのようなフォームの提出など一連の手続きがされるはずです。
ということで、RSUは長期的なインセンティブとしては、大変よくできた制度なのですが、確定申告がかなり面倒で、最初のうちは戸惑うかと思います。
毎年やっているとルーチン化してくるのでそのうち慣れますが。
RSUの確定申告における扱いは、私の令和5年の確定申告を例として、↓のブログ記事に書きましたので、興味ある方はご参考にしていただければと思います。
外資系の定年、退職金、再雇用
日本の外資系企業に定年、退職金、再雇用といった制度があるかというと、これも会社によってまちまちです。
日本に長く根付いている企業だと、日系企業に近い制度を採用している可能性があります。
もともと日系だった企業が外国企業に買収されて外資系になった場合も、日系企業時代の制度を引き継いでいる場合があります。
私が勤めたところは最初から外資系として設立されたこともあり、このあたりの制度は、通常の日系企業とは少し異なっていました。
具体的には、
- 定年は60歳から65歳の間のある年齢で設定されている(具体的な年齢は伏せます)。
- 定年以降、本人の希望があれば65歳まで働けるが、1年毎の契約更新となる。
- 定年後もジョブ型雇用が適用されるため、職務内容に応じて年収が決まる。
- 日本の再雇用のように、一律に役職を解かれて新卒相当の給与に引き下げられることはない。
- 退職金に類するものは確定拠出年金のみ。企業年金や退職一時金はない。
といった感じで制度設計されていました。
私は定年まで勤めなかったので、実際に上記の制度の適用を受けた経験はありません。
まとめ
外資系の給与・雇用形態について、私が50代の大半を務めた外資系企業での経験をもとに振り返ってみました。
統計データで確認したわけではありませんが、スペシャリストとして腕に自信があるなら、メンバーシップ型雇用の日系企業よりも、ジョブ型雇用の外資系企業の方が、50代であっても転職者を受け入れてくれる可能性は高いと思います。
しかも給与水準は日系企業よりも高めですから、本気で転職を考えているなら外資系も選択肢に入れて検討されるとよいでしょう。
今回は外資系に関して給与や雇用といった、ポジティブな面について書きました。
一方、外資系には日系にはない厳しさもあります。その点についてはまた別の投稿に書こうと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。次回のブログでまたお会いいたしましょう!
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