追悼!経済コラムニスト 大江英樹さん

生き方・QOL

皆さま、こんにちは!当ブログ管理人の悠爺です。

先のブログで、1月1日に経済評論家の山崎元(やまざき はじめ)さんが逝去されたことにふれましたが、同日、私がまさしく「悠々自適」の見本と仰いでいた経済コラムニストの大江英樹(おおえひでき)さんも逝去されました。

今後、このブログの主題である悠々自適の実践において、大江英樹さんの発信や著作については、これまで以上に参考にしたいと思っていましたので、本当に残念でなりません。

心からご冥福をお祈りいたします。

山崎さん同様、私は当然ながら大江さんとの面識はありません。

私が著作やコラムを通じて一方的に尊敬させて頂いた、一愛読者だったということです。

今回は大江さんのいくつかの著書の中で大いに共感した内容について振り返りながら、自分の見解も述べてみたいと思います。

大江英樹さんの著作から共感したこと

早く”成仏”すべし

ひとことで言うと、”成仏”とは、いつまでも会社人生にこだわらないで新しい人生に向かう、ということなのです。

大江英樹 著 「定年前、しなくていい5つのこと」光文社新書 2020

企業で50代前半の社員向けに行われる「ライフプランセミナー」のような場に大江さんが講師として招かれたときに、よく「みなさん、はやく成仏しなさい」と言われたそうです。

50歳になってそのようなセミナーに呼ばれたということは、それ以上出世することはないのでセカンドライフの準備をしなさいという会社のメッセージを受けたということ。

それを察しなさい、ということでしょう。

さらに大江さんは50代のうちに成仏し、気持ちの切り替えができた人ほど後半人生が充実すると説いています。

これは大いに言えることで、実際私などは45歳ごろすでに会社の出世競争から脱落したことを自覚していましたが、実際に私が成仏したのは最初の会社を辞めるタイミングで、年齢的にはちょうど50歳だったと思います。

当時社内にはリストラの嵐が吹き荒れ、事実上私も失職したわけですが、リストラの方針をめぐって私は会社の経営層とぶつかっていました。

サラリーマンで何階級も上の人が出す方針に対し、首を縦に振らないというのは(ドラマの中ではあっても)、ふつう誰もやりません。

どの道このままこの会社に残っても私にやれる仕事はないし、ましてや出世の道などない。それなら自分の思うところを素直に出してみようと考えたのですね。

振り返れば、私はこの時点で”成仏”したのだと思います。

結果は想定どおりの「大負け」でした。

サラリーマンの世界でこうした無謀な勝負に出れば、ほぼ確実に負けます。

私が負けを覚悟してもぶつかりに行けたのは、次の勤め先を確保してあったからです。

それ以降、出世意欲も職位に対するこだわりも、いっさいがっさい消えました。

あの時成仏していなかったら、愚痴っぽい中高年サラリーマンに落ちぶれていたと思います。

成仏できて本当によかったです。

増えるFIREしたい人々

続いて”FIRE” = Financial Independence, Retire Earlyに対して、大江さんは、

私はFIREという考え方は素晴らしいと思っていますが、特に大事なのは最初の2文字FIであって、REは二の次だと思います。ところがFIREに憧れる人は多いものの、その多くは後ろの2文字、つまり早期にリタイアするということが主眼となっています。

大江英樹 著「となりの億り人」朝日新書 2021

とFIREブームに対して、懸念を示していました。

私は他人の人生の選択には、基本口は出さない主義です。

ただ、自分の子供がFIREすると言い出したら口出しするかもしれません(笑)。

FIREの是非はここでは置いておくことにして、大江さんはFIREが流行る理由として、

サラリーマンが早く仕事をやめたいと思うのは仕事が苦行だからです。なぜ仕事が苦行かと言えば、それは自己決定権が少ないからです。

と解説しています。

確かにサラリーマンを引退して、経済コラムニストとして独立に成功した大江さんご自身の偽らざる気持ちからそう述べられたのだと思いますが、私はそれだけではないと思っています。

日本の企業全体を覆っている閉そく感こそ、若い世代の間でFIREを流行らせている真の要因ではないか?

などとつらつら考えていたら、大江さんの最近の著書:

大江英樹 著「90歳までに使い切るお金の賢い減らし方」光文社新書 2023

にも同じことが書かれていました!

内向き志向で既得権に居座る、成れの果てのようなオジサンたちが職場に増えれば、若者が「あんな姿になるくらいならさっさと資産を作って早期リタイアした方がまし」と思っても不思議ではありません。

ところでFIRE発祥の地である米国ではどうなのでしょう?

閉そく感よりも、競争の激しい世界になじめない人たちが生き延びる戦略として編み出したのかもしれませんね(全くの個人的な憶測ですが)。

この閉そく感は、私が最初に勤めた日本の大企業でも感じました。

個人の生き方としてFIREを選ぶのはもちろん自由ですが、FIREする若者が増えればGDPは下がり、日本の国力全般に対してマイナス影響が及ぶことは確実でしょう。

大企業からイノベーションが生まれなくなり、成長しなくなったことがFIRE増殖の原因だとすれば、企業が自己改革して閉そく感を打破する以外に道はありません。

国も再雇用制度などで年金支給を遅らせることの対策を企業側に押し付けるだけでなく、もっと本質的な対策を打たないとまずいことになるではないか、そんな懸念が脳裏を過ぎります。

FIREの増殖はそうした意味でのシグナルなのかもしれません。

いつのまにか億り人になっていた

結局のところ、資産形成に近道はなく、その人に合ったやり方で支出を最適化し、地道に貯蓄や投資を続けていくことでいつのまにか億り人になっていたということなのです。

大江英樹 著「となりの億り人」朝日新書 2021

過去のブログ記事に書きましたが、資産が1億円に到達したときは、そのことにすら気づかなかったので、「いつのまにか億り人になっていた」というのは共感します。

“1億円貯まったらFIREする”

私はこの発想には違和感を覚えます。仕事と資産は別物と考えているからです。

この点も大江さんと感覚は近いように思っています。

1億円は通過点であって特に意味はないですし、人生観が大きく変わったということもありません。

節約なんかする必要はない

FIREは昨今のインフレ影響もあってブームは下火になったという話を耳にしますが、「節約」は逆にインフレの影響で大流行しています。

もともと節約はリーンFIRE達成の手段として表舞台に出てきた感がありますが、最近では「節約系You Tuber」を名乗る人たちも多数出てきており、どのチャンネルも大変な人気です。

これに対し大江さん曰く、

50代くらいからは節約なんかする必要はない。私が節約をあまりすすめないのは、そうすることでストレスが溜まるからです。

大江英樹 著「50歳からやってはいけないお金のこと」PHPビジネス新書 2023

一方、若い人が将来やりたいことの軍資金を稼ぐために節約するのは問題ないとも指摘しています。

2019年の老後2000万円問題が世間を賑わせたころから、確かに老後不安が誇張されているように感じます。

老後の経済不安は具体的な対策を打って行動するために必要な感情ではあるけれども、支出を見える化して無駄な固定費などの支出を削減する前に、効果も見極めずに節約に走って、ストレスが溜まって挫折しまうのは問題だ、ということが大江さんの指摘です。

固定費の削減などは、本ブログにアクセスされている方はすでに大いにやられていると思いますが、保険契約の変更、ネット銀行の活用、携帯キャリアの見直しなど、ITの知識が必須になる上、手続きもそれなりに手間なので、一般的な50代以降の方々にはハードルが高いのかもしれません。

私も毎月の家計簿公開でコメントしていますが、老後の支出を予測するため必要以上に節約しないことを心掛けています。

尚、私は節約そのものを否定するつもりは全くありません。

ストレスが溜まるような節約は長続きしませんし、節約に走る前にどれだけの効果があるのか金額で把握した上で、それに伴うストレスと勘案した上で本当にやるべきか判断することは大事だと考えています。

まとめ

大江さんは、60歳以降の起業は道楽でやればよいからリスクは案外低いとも言われていました。

大江さんの起業成功の要因は、サラリーマン時代に蓄積した金融知識、3万人の投資家と向き合ってきたことで得られた経験値、さらにわかりやすい文章を書く才能があったからだと個人的には思っています。

定年起業は憧れではありますが、結局それまでに価値に転換できる人的資本が形成されているかどうかで決まるのではないかと。

そうだとすると私にはもはや定年起業は高嶺の花、手遅れなのかもしれません。

50過ぎて出口戦略なきまま不安にあおられて資格をあれこれ取るようなことはしませんでしたが、かといって自分に何ができるのか。まだまだサラリーマンの出口戦略が圧倒的に不足しています。

大江さんの著書をこれからも折に触れて読み返し、後半人生を謳歌するためのヒントを探っていきたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。次回のブログでまたお会いいたしましょう!

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