皆さま、こんにちは!当ブログ管理人の悠爺です。
経済評論家の山崎元(やまざき はじめ)さんが1月1日に逝去されました。
資産運用を学ばれた方であれば、山崎さんの著作を一度は手にされたことがあるのではないでしょうか。
私もその一人で、50代も後半になり、「先延ばしにしてきた資産運用、そろそろ考えないとなぁ」と思って本屋に立ち寄り、最初に買ったのが宝島社のムック本「山崎元の”やってはいけない”資産運用 もう銀行・証券会社にだまされない!」でした。
以来、山崎さんには書籍やYouTube動画を通じてたくさん学ばせて頂きました。
もちろん私には山崎さんとの面識はなく、一方的に私の恩師と思っているだけです。
我が恩師のご逝去を悼み、こころから御悔やみを申し上げる次第です。
山崎さんの最大の貢献は、「ほったらかし投資術」を編み出して、私のような一般市民の投資リテラシーを向上させたことだと思っています。
そこで恩師の教えの復習も兼ねて、山崎さんのたくさんある著書の中でもおそらく最も読まれている「ほったらかし投資」の公式本(↓)
を読み返してみました。
今回は「ほったらかし投資術」の教えを通じて、自分の資産運用に取り入れた部分と、参考にはしたけれども取り入れなかった部分をピックアップして、なぜそのように判断したのか、当時の動機や考え方について振り返りつつ考察してみます。
「ほったらかし投資術」とは
ざっくり言うと
「ほったらかし投資術」は、ざっくり言うと、
- 全世界株式のインデックスファンド(リスク資産)
- 個人向け国債変動金利型10年満期(無リスク資産)
- 普通預金(無リスク資産、生活防衛資金)
でポートフォリオを組み、自動で積み立ててあとは放置、というものです。
生活防衛資金、無リスク資産、リスク資産の割合をどうするか、iDeCoやNISAの活用など、実践方法について、具体的かつ懇切丁寧に書かれています。
なかでも最新刊の「全名改訂 第3版」で特徴的なのは、リスク資産の運用についてはeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)、いわゆる「オルカン」一本でよい、としていることでしょう。
そして、
- ネット証券で口座を作り、自動積立を設定したらあとは何もしなくてよい。
- 投資に時間を費やすのではなく、仕事や遊びに人生を有意義に使うべきだ。
と説いています。
オルカン1本という究極のシンプルさ、その上再現性が高いので、書かれている通りにやればだれでも同じ成果を出せる、というわけです。
生活防衛資金、リスク資産、無リスク資産
「ほったらかし投資術」では金融資産をこれら3つに分類しています。
生活防衛資金は、3~6カ月先分の生活費など使うことが決まっているお金で、これはいつでも引き出せるように銀行の普通預金に入れておく。
リスク資産の金額の出し方は、前述のとおり年間の損失が最大3分の1としているので、何らかの手法で1年間に許容できる(精神的かつ経済的に)最大の損失額を求め、その3倍の金額をリスク資産の金額とします。
リスク資産は、繰り返しになりますが「オルカン」1本でよい、としています。
全金融資産から生活防衛資金とリスク資産を引いた残りがあれば、それは当面は使わないけれども、リスクにさらしたくないお金なので、無リスク資産に分類します※。
無リスク資産は、個人向け国債変動金利型10年満期と銀行の普通預金で構成することをすすめています。
「オルカン一本」が導く特徴
以下は「オルカン一本」ゆえに導かれるほったらかし投資術の特徴です:
- 債券、金など株式以外のアセットクラスを考えなくてよい
- リバランス不要
- 年齢に関係なく、今後に必要なお金の合計額の1.5倍以上の金融資産を持っているなら全額リスク資産(オルカン)に回してよい
オルカンという株式一本で運用するので他のアセットクラスを考えなくてよいことから1は自明です。
同様に他のアセットクラスがないのでリバランスも不要、よって2も自明ですね。
続いて3についてですが、保守的な投資本では、年齢とともに株式の比率を下げて債券や現金の割合を増やすこと(例:株式比率 = 100 – 年齢とすべし、など)をすすめるケースが多いです。
一方、ほったらかし投資術では株式100%ですからそのような調整をする必要はなく、従って年齢は気にすることなく、いつでも開始できる、と主張しています。
また、「今後に必要なお金の合計額の1.5倍以上の金融資産を持っている」のところの「1.5倍」のカラクリは、著書の中で、オルカンの年間のリスク(変動幅)とリターンを、
1年後に「3分の1の損」と「4割の儲け」という広い範囲で変動しながらも「平均的な投資リターンは年率5%」と考えた上で、リスク資産に金額でいくら投資ていいか考える。
としていることによります。
3分の1の損が出る可能性があるので、必要金額の1.5倍以上資産があれば、3分の1失っても必要金額は確保できるから問題ない、という理屈です。
それ以外の特徴
「リスク資産はオルカン一本」以外にも、上の本には以下の主張が繰り返し出てきて、特徴をなしているように読めます:
- 外国債券は為替リスクの割にリターンが低いからリスク資産に組み入れる必要はない。
- まとまった金額があるのにドルコスト平均法で分割投資するのは気休めに過ぎず、直ちに一括投資するのが合理的。
- お金が必要になったら、その時の値段を気にせずに必要な分を部分的に解約すればよい。
これらの点については、私は異なる見解を持っていまして、実際の運用も異なっています。
正確には、3についてはまだ取り崩しの実践には至っていないので思案段階ですが、「その時の値段を気にせずに」取り崩すことはおそらくしないと思っています。
悠爺流「ほったらかし投資術」
山崎さんの「ほったらかし投資術」は、方法論としてわかりやすく、かつ手順も具体的なので、投資初心者でもすぐ始められるスグレモノであることは間違いないでしょう。
年齢に関係なく使える投資術ですが、無分配の株式100%の投資信託「オルカン」一本で運用するので、ハイリターン・ハイリスクな運用といえます。
私のように60歳前後から投資を始める場合、「ほったらかし投資術」で運用するならリスク資産の割合を少な目にすること、すなわち年間の最大許容損失を小さめに見積もることが肝要です。
そうすれば無リスク資産とあわせたアセットアロケーションとして、ある程度リスクをコントロールできます。
でも、実際に投資を始めると値動きが気になるのが人情で、そう簡単にほったらかしにはできません。
無リスク資産を国債と普通預金にしてしまうと、自分の証券口座で推移が見られるのはオルカン1本ですから、オルカンの値動きにどうしても一喜一憂することになります。
著書によるとオルカンの期待リターン5%、標準偏差σを19%としたとあるので、2σで見れば、ワーストで 5% – 19% x 2 = -33%ですから、年間最大3分の1の損失という著書の主張に符号します。
一方、リーマンショックのような3σ級の暴落が起きれば、5% – 19% x 3 = -52%と、リスク資産は半減します。
労働収入がなくなる老後になって、これだけの資産額の変動に皆さんは堪えらるでしょうか?
堪えられる方は「ほったらかし投資術」で全く問題ないと思います。
私は「自分は大丈夫ではない」と判断しました。
そこでメンタル的に自分が「ほったらかし」できるアセットアロケーション、ポートフォリオを検討した結果が以前のブログで以前紹介したコア・ポートフォリオです(↓)。
結果として、私の運用は、山崎さんの「ほったらかし投資術」とはいろいろ異なる運用になっています。
以下、異なる点を4つほど紹介します。
悠爺の場合①:インデックスと配当の両狙い
オルカンのような無分配のインデクスファンド1本での運用は、配当(分配)金が出るETFや高配当株と比べて、配当に対する課税がなく再投資されるためキャピタルゲインが大きく、資産成長を加速できます。
その点、若い方で運用期間を長く取れる方にはおすすめの投資法です。
一方、私の場合、年齢的に資産運用開始と同時に出口戦略(取り崩し)も考えなければならないので、資産を大きく成長させることはもはや望むべくもなく、かつさほど重要ではありません。
配当(分配金)収入にもリスクがあるのは承知しているので、結論としてはインデックスファンド(投資信託)とETF(分配金狙い)のミックスで組むことにしました。
悠爺の場合②:外国債券を組み入れ
「ほったらかし投資術」は、無分配のインデックスファンド(投資信託)のみでリスク資産のアセットを組む前提なので、為替リスクの割にリターンの低い外国債券の投資信託を組み入れる必要はない、という理屈は理解できます。
私は老後の取り崩し期において、一定の配当収入は得たいと考えいたのと、株が暴落したときのヘッジアセットとして米国債・社債のETFを組み入れる意味はあるとバックテストを通じて認識しているので、債券については投資信託ではなく、ETFをコア・ポートフォリオに組み入れています。
国内債券は、著書でも紹介されている「個人向け国債変動10年」くらいしか選択肢がありませんが、為替リスク以前にリターンが低すぎて運用する魅力を感じないので、一切持っていません。
従って、私の無リスク資産は全額普通預金です。
悠爺の場合③:一括投資よりも分割投資
山崎さんがドルコスト平均法で分割投資するよりも一括投資することをすすめる根拠として、著書の中で
- 過去の買い方によって現在持っている資産のリスクが減るわけではない。
- 株式の価格変動に取るコスト平均法が一括投資よりも有利になるような性質があるわけでもない。
と書かれています。
確かにそれはそうですね。
ただ、一般投資家が気にしているのは一括投資による「高値づかみ」のリスクであって、ドルコスト平均法では平均取得単価を下げられる可能性があるため、高値づかみに対するヘッジになります。
そこに魅力を感じているのです。
もちろん一括投資の方が運用期間を長く取れるのでより大きなリターンを得られる可能性はあります。
結局、高値づかみのリスクの大小、運用期間の差によるリターンの大小の組み合わせで、どちらを好むかという「リスク選好度」の話だけのような気がします。
私は高値づかみのリスクは気になるので、気休めかもしれませんが、まとまった投資資金があっても、期間を決めてドルコスト平均法にならって分割投資しています。
投資を長く継続するには、合理性の追求はもちろん重要ですが、同時にメンタルを保つ工夫も(とりわけ私のような初心者には)重要になってきます。
その意味で、ドルコスト平均法は、合理性を超えたメンタルを保つメリットがあると思います。
悠爺の場合④:老後は配当収入から先に消費
YouTubeに収録されている動画を見ても、山崎さんの基本的な取り崩しの考え方は、必要になったときに必要なだけ、取り崩せばよいという主張は変わっていないようです(↓)。
老後になったら、大きな出費を伴うイベントは少なくなるので、毎月 or 毎年の必要金額は平準化するでしょう。
そうなると定額取り崩しによる「収益率配列のリスク、SRR: Sequence of Returns Risk」が顕在化します(↓)。
私の中では、今のところSRRに対する完全解はないので、ポートフォリオを工夫することでSRRリスクを低減するようにしました。
運用元本がそこそこ大きくなれば配当(分配)金の収入である程度生活費を賄えるようになります。
私はそちらを先に消費して、投資信託を取り崩すのはSRR回避の観点からできるだけ後回しにしようと考えています。
この点も山崎さんの「ほったらかし投資術」とは異なる点です。
まとめ
冒頭に書きましたが、私は本屋で山崎さんの本を手にして読んだことで、資産運用を始めることができました。
私にとっては恩師のような方です。
時に優しく、ストレートかつ愉快に、一般市民の目線にたって投資法を教えてくれた山崎さんの新たな著作やYoutube動画を目にすることはできなくなりました。
山崎さんご自身が資産を取り崩すフェーズに入ったら、また新たな発見とともに有益な情報発信されるはず、と期待していただけに大変残念に思っております。
ご冥福をお祈りいたします。
ここまでお読みいただきありがとうございました。次回のブログでまたお会いいたしましょう!
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