皆さま、こんにちは!当ブログ管理人の悠爺です。
タイトルの「ハピネス・カーブ」は、ブルッキングス研究所シニアフェローのジョナサン・ラウシュ氏による造語で、氏によると、人の幸福度は加齢とともに低下し、40代後半から50歳ごろに底を打ったあと、再び上昇に転じるU字型の曲線を描くといいます。
私自身、これまでの投稿にも書いたように50歳で職場消滅のリストラを経験しているので、50歳が底(ボトム)と言われると、確かに当たっているような気もします。
ラウシュ氏はこのU字曲線は普遍的な現象であって、国を超えて多くの人、さらには大型の霊長類にも当てはまるのだと主張しています。
サラリーマンのキャリアは50歳までにはほぼ結果が出てしまうので、若いころに抱いていた自分の将来と現実のギャップから幸福感が下がるのではないか、そう考えるとサラリーマンには結構当てはまりそうな気がします。
ではどうして50歳以降になると、幸福度が上昇するのでしょうか?
素朴な疑問ですが、もし本当に50歳以降幸福度が上がるのであれば、それは当ブログの目標である悠々自適の達成に対してポジティブな傾向と言えます。
そこで今回の投稿ではハピネス・カーブについて考察してみたいと思います。
日本の就業者のハピネス・カーブ
幸福度については、国や民族によって特徴があるではないかと思い、まずは日本のデータを調べることにしました。
当ブログは「サラリーマンが悠々自適なセカンドライフを獲得すること」にフォーカスしているので、日本人の中でも働いている人のデータが欲しいと思い、リクルートワークス研究所が公表している2022年度のデータを参照することにしました。
ここからダウンロードできる2022年度の全国就業実態パネル調査 (JPSED2022データ集)は524ページにおよぶ大作で、幅広い調査データが収録されています。
267ページに幸福度に対する調査結果が掲載されており、5段階で評価しています。5がとても幸せ、1がとても不幸、で1から5の数字で答える形式になっています。
調査の対象は就業者で、正規職員、非正規職員、役員・自営業主の就業形態と、15-24歳、25-34歳、35-44歳、45-54歳、55-64歳、65歳以上の年齢区分のマトリクスで、それぞれ1から5の回答が全体の何%を占めたか、n数(回答者数)とともに表として掲載されています。
さらに男女にわけて集計されています。
そこで5または4と回答した人を「自分は幸福と感じている」とみなすことにして、5または4の占める割合を年齢区分ごとに集計し、n数で重みづけ平均してみました。
そしてグラフにすると以下のようになりました。
尚、年齢による幸福度の変化に注目するため、就業形態による差は見ていません。すべての就業形態の値を合算して%にしています。
別の機会で就業形態による差も分析したいと思いますが、今回は省きます。
こうしてみると、50歳を中心とする45-54歳の年齢区分をボトムとして、その後は幸福度が上がるのは、日本でも確かなようです。
ただ、男性と女性でカーブが明らかに異なりますね。
この差はいったい何を意味しているのでしょうか?
尚、この調査は就業者を対象にしているので、専業主婦(夫)の方はデータに反映されていません。
50代から幸福度が増す理由
男女差についてはあとで考察することにして、男女共通してみられる傾向として50代から幸福度が増していることが上のグラフから見て取れます。
この現象については諸説あるようですが、以下のような記事を見つけました。
ノースウェスタン大学のシュヴァント准教授の研究によれば、若年期ほど、よりよい将来を予想し、生活全体の満足度も今より高くなると見積もる傾向があります。若い時ほど今後の人生への期待値が高い状態にあるわけです。これが中年期の理想と現実のギャップを大きくする原因となります。
また、シュヴァント准教授は高齢期になるほど将来の生活全体の満足度を低く見積もる傾向があると指摘しています。このため、理想と現実のギャップも小さく、予想していなかった小さなポジティブな出来事が幸福度を引き上げる要因となるわけです。
引用:ダイヤモンド
なるほど、幸福度とはあくまで相対的なものであって、若いうちは将来の成長を夢見て幸福と感じられる基準設定が高くなるし、高齢になればその逆が起きるということですね。
こうしてみると人間ってうまくできているものだと感心します。
そしてその境界点が概ね50歳前後で来るというわけです。
「下流老人」「老後破綻」といった怖い言葉が飛び交って、現役世代を慄かせている昨今ですが、65歳以降で働いている方たちの幸福度は案外高いというのが実情のようです。
ジェンダーギャップ指数OECD最下位の日本で女性の幸福度が男性よりも高い!?
日本で男女共同参画が叫ばれてもう何年たったでしょうか?
世界経済フォーラム2022によると、日本のジェンダーギャップ指数は0.65で146か国中116位、OECD加盟国では最下位という、大変不名誉な結果になっています。
こうした状況なので、当然日本で働く女性の幸福度は男性より低いだろうと思われるかもしれませんが、先に示したグラフはそうなっていません。
グラフから明らかなように、男性が50歳前後に向けて一貫して幸福度を下げている一方、女性の幸福度はほとんど下がらないのです。
女性の幸福度の方が男性よりも高いという結果について、統計データ分析家の本川 裕氏は、日本に特異的に見られる現象だと述べています。
うつ病は、男性より女性のほうが多いというのが世界の通例であることからも類推できるように、ネガティブ感情度の男女比(男性÷女性)は、日本を除くすべての対象国で、1以下である。すなわち、女性のほうがネガティブで「マイナスの感情」を抱きがちである。
… 最も特徴的なのは、日本人だけ男性のネガティブ感情が女性を上回っている点(しかも14%も)である。これは、世界価値観調査などの幸福感でも日本人の幸福度の女性優位が目立っているのと軌を一にする現象であるといえる。
なかなか興味深いですね。
いまだ男性中心の日本社会は、結果として男性の幸福度を下げ、距離を置いている女性の方がかえって幸福度が高くなっているという構図になっているのでしょうか。
だとしたらなんとも皮肉な結果だと言わざるをえません。
いずれにしても、働く男女の幸福度にこんな差があるとは想定していなかったので、今回はちょっとした発見でした。
まとめ
リクルートワークス研究所のデータから、「人の幸福度は年齢ととも50歳前後をボトムとしたU字カーブ(ハピネス・カーブ)を描く」という説は、働く日本人にも当てはまることがわかりました。
悠々自適なセカンドライフを獲得するには、50歳前後(45-54歳)の時期をいかに乗り切るかがポイントになりそうです。
また男性と女性ではハピネス・カーブの形状が異なり、男性が50歳に向かって年齢とともに幸福度がはっきりと下がっていくのに対し、女性はあまり下がりません。
そしてどの年齢層においても女性の方が男性より幸福度は概ね高いことがわかりました。
このデータの背後にあるものは何か — いろいろ考えられるので、引き続き考察を深めたいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。次回のブログでまたお会いいたしましょう!
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